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『オーケストラ!』感想。

2012/07/17
昨日は、BSジャパンで放映された映画『オーケストラ!』を観ました

地上波で放映される洋画は、最近、毎度おなじみのアクション大作シリーズものばかりで観る気が起きないんですが、BSで放映される映画は、ちょっとマニアックな良作をチョイスしてくれているので、要チェックです。

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この映画…モスクワとパリを舞台にした、2009年のフランス映画。

先取りして感想を書くと、とても素敵な映画でした

フランス映画らしいセリフの面白さ、シュールさはもちろん、ストーリーもベタかもしれないけれどおもしろくて、最後まで飽きさせません。

それに、ハッピーエンドなので、観終わったあと、温かで、爽やかな気持ちになれます。
フランス映画にときどきありがちな後味の悪さとか、「それでどうなったの!?」という宙ぶらりん感もまるでなく。

そして、主人公はじめ登場人物が、いろいろ問題アリなんだけど愛すべきダメ人間…でも、やる時はやる!…って感じで、魅力がありました。

そして、作品中で重要な意味をもつチャイコフスキーの音楽も良くて。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。

公式サイトはこちら。(注意:音が出ます!)

***

あらすじは大体こんな感じ↓

主人公は、ソ連時代の30年前、ブレジネフ政権のユダヤ人排斥政策に楯ついたがために解雇されて、今は劇場の清掃員に甘んじて落ちぶれ人生まっただ中にいる元ボリショイ交響楽団の天才指揮者、アンドレイ。

そんな彼は、ある日、劇場支配人のオフィスを清掃中に、パリのシャトレ劇場からボリショイ交響楽団に宛てたファックスを手に入れる。
それは、当初公演を予定していた別の楽団が来られなくなった代わりに、ボリショイ交響楽団をシャトレ劇場での公演に招聘するという内容のファックスだった。

ファックスを読んだアンドレイは、本物のボリショイ交響楽団に代わって、かつての仲間をもう一度集めて偽の楽団を組織して、2週間後のパリ公演を行うという計画を思いつく。

そのために、アンドレイは、今は救急車の運転手をしているチェロ奏者のサーシャとともに、共産主義時代へのノスタルジーを捨てきれないイワンをマネージャーに立てて、パリ公演の計画を進めていく。

アンドレイがパリ公演に望むことはただ1つ―今をときめくヴァイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケをソリストとしたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の演奏。
彼がそれを望むのには、深い理由があって…。

***

…と、落ちぶれたオーケストラのメンバーが本物の楽団になりかわって大々的な公演を行う…というストーリーがそもそも私好みというか、ベタなんだけどおもしろそう!…と期待させてくれます。

そして、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と若手ヴァイオリニスト、アンヌ=マリーをめぐる謎も出てきて、ストーリーにぐいぐい引き込まれました。

ストーリーとしては、さすがにありえない話で、おとぎ話のようでもあるんだけど、楽団員から一転、落ちぶれ人生を送るアンドレイや他の楽団メンバーたちがかつての栄光をとりもどしていく姿は、観ていて爽快感がありました。

それでいて、格好の良いサクセス・ストーリーじゃなくて、最後まで登場人物たちが人間臭くて、いろいろダメなところを露呈してしまっているところがまた良いというか。
パリまで公演に来たのに、リハーサルにも来ないでしっかりちゃっかり商売しちゃってる楽団員とか、アルコール依存症と過去の哀しい記憶にとらわれてアンヌ=マリーにも愛想つかされてしまうアンドレイとか。
そんな愛すべき人間臭い姿を描いているところが印象に残ります。
今は格好良いヒーローが受ける時代でもないしね…。

最後はきっとうまくいくんだろうなぁ…と思わせながらも、ちょっと引っぱるところも良い(笑)

そして、ラストは何もかもうまくいったようですが、あえてそこを長々と描かずに、コンサートの様子の合い間に映像として見せたところも、あっさりしていて良かった。

そうそう、そこで各国の新聞が登場するのですが、日本は毎日新聞でした(笑)

***

そして、やはりこの映画の魅力は、登場人物にあると思います。

実際のところ、たくさん登場する楽団員のほとんどは、さらっと出てくる程度。
楽団員集めの場面でもっと引っぱるかと思いきや、そこのところはわりとあっさりしていました。

楽団員それぞれにも事情があって、それはそれでおもしろいんでしょうが、あれだけの人数の楽団員すべての事情を描くのは、2時間ほどの映画では無理。
あえて、その中の何人かに絞ったうえで、中でも指揮者アンドレイに焦点を当てた描き方は正解だったと思います。

とはいえ、アンドレイ以外にも、サクラを派遣する商売?をやっている彼の妻、彼の友人でユダヤ系のサーシャ、共産主義時代へのノスタルジーを抱くイワン、ちゃっかり怪しげな商売をしてしまってるユダヤ系トランペット奏者の親子、天然ガスでもうけているらしい新興富裕層の彼…などなど、他の登場人物も魅力的で突っ込みどころ満載。

中でも、アンドレイとつるんでいるサーシャは文句なしに「良い奴」という感じなのですが、偽楽団のマネージャーを務めることになるイワンは、30年前、アンドレイたちの解雇の契機となるコンサート中断を実行した人物で、サーシャがKGBといって毛嫌いしている人間。

そんなイワンが偽楽団のマネージメントを嬉々として引き受けた裏には、パリで、フランス共産党の旧友モーリス(モモ)と再会して、再び共産主義を復興させようという目論見があってのこと。
共産主義時代へのノスタルジーか、ソ連時代の共産主義に固執する彼の姿は、ソ連崩壊から20年ほど経った時代となっては、もはや滑稽でもあり…。

でも、そんな彼も、最後はフランス共産党での演説を蹴ってまで、しっかり楽団の公演成功のために協力してしまってたりして、やはり愛すべき人間の1人。
映画の中では、1番キャラが濃い人物だけに、良い味出してました。

あとは、天然ガスでもうけてる新興富裕層らしき男性が、イワンにのせられて(だまされて?)楽団のパリ公演のスポンサーとなるのですが、シャトレ劇場の支配人に圧力をかけて、フランスのテレビ局に独占放映権のある公演の放映権を無理やりとってしまうくだりの会話もフランス的ユーモアというか…おもしろかったです。
彼はチェロ奏者ということになってますが、もともと楽団員でもなく、チェロも下手なので、最後は縛られてましたが…(笑)

そうそう、シャトレ劇場の支配人やスタッフも良い味出してました。
劇場が赤字なので、公演を成功させようと躍起になってる姿とか。

ロシアの偽楽団側のまるで常識の通じないやりたい放題・野蛮とも言える非常識っぷりと、それに眉をひそめながらも大概自己中なフランスの劇場側の対比もなんかシュールで笑えました。

フランス映画って、なんかシュールよね…。

***

そして、この映画で印象に残っている場面は、なぜか最後のコンサートの場面ではなく。

休暇でパリに遊びにきた本物のボリショイ交響楽団の支配人が、アンドレイ指揮のボリショイ交響楽団の公演のポスターをパリの街角で見つけてびっくりした場面の直後、これまでよれっとしていたアンドレイが、正装の白いシャツと黒いジャケットに袖を通す場面。
そして、シャトレ劇場での公演の夜が幕を開け…。

この切り替えというか、ダメ人生に甘んじてきたアンドレイが、指揮者としての正装に身をつつんで、マエストロとしての自分にある種変身する瞬間というか…特別な、人生を変える夜の幕開けを象徴するにふさわしい場面で、期待感のようなものにぞくっとする感じがしました。

洋服を変える…ただそれだけのことなんだけど、そこには深い象徴的な意味があるような気がして。

よれっとしていたアンドレイが、このときばかりはとても素敵に見えました。

***

そうそう、この映画のコンサートの場面は、本当にシャトレ劇場で撮影されたそうです。
そんなところも見どころの映画ですね!

***

…とまあ、とりあえず感想はそんなところで。

とにかく、味のある素敵で温かな映画です。
音楽も素晴らしいので、一見の価値あり。


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17:30 映画感想 | コメント(0) | トラックバック(0)

映画レビューINDEX

2012/07/17
ふと考えたら、このブログを始めてもう5年も経つんでした。
…ちょっとびっくり。

ブログを始めたそもそものきっかけは、PotC、それもノリントン提督だったのですが。
つまり、最近は、音楽ネタも増えてきましたが、映画ブログとして始めたんですよね。

…それで、ちょっと振り返ってみたら、映画感想の記事も30を越えていました。

そんなわけで、整理の意味もこめて、映画感想の記事のインデックスを作ってみました。
新しい記事は、適宜追加していきます。

インデックスへは、カテゴリからもリンクしておきます。

なお、レビューとしてではなく、マニアックにただ語っている映画については、ここには入れていません。
また、PotCについては、独立したカテゴリを設けているので、そちらをご覧ください。
以上、あしからず。

>>続きを読む・・・
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