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映画『サン・ジャックへの道』を観ました。

2012/06/27
映画ブログとしてはじめながら、映画ネタを書いたのはすごくひさしぶりな気がするけど、それはきっと気のせい

さて、昨日は、BSジャパンだったかどこだったかで放送された映画『サン・ジャックへの道』を観ました。

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この映画、もともとチェックしてたわけでも、知ってたわけでもなくて。
たまたま新聞のテレビ欄を見ていたうちの母が、「今日は『サン・ジャックへの道』とかいう映画があるわ。フランス映画やって。観てみる?」とかなんとか言ったので、おもしろくなかったらチャンネルを替えたらいいや…くらいの気持ちで観ました。

フランス映画って、クセのあるものが多いので、「フランス好き」を公言する私も、映画(とサッカー)に関しては、フランス…うーん…という感じなのですが。

でも、タイトルが『サン・ジャックへの道』ということで、それってもしかしなくても、あのサン・ティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路(フランス語ではサン・ジャック・ド・コンポステル)のことだし、巡礼路のルートであるフランス南西部からスペイン北部は、個人的に興味がある場所なので…ということで、若干の興味をもちつつ、でも、ダメ元なので作業をしながら、観ることにしたわけで。

そしたら…意外にも当たりで、おもしろかったので、結局、作業をやめて見入ってしまいました

以下、少々ネタバレあります。

映画は、いわゆるロード・ムービー的な感じで、それぞれ事情をかかえた9人のメンバーが一緒にサン・ティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅をするんだけど、その道中を描いたストーリーになっています。

9人のうち、中心的に描かれるのは、亡くなった母親の莫大な遺産を相続するための条件として、一緒にサン・ティアゴ巡礼をすることを余儀なくされた3人の兄弟。

兄のピエールは、大会社(掃除機を作ってる会社…とか言ってたような)の経営者で、裕福なんだけど、奥さんがアルコール依存症で自殺願望を抱えてたりして、本人はそんなストレスから、病気だ…とか言ってたくさんの薬が手放せない。
妹のクララは、高校の国語教師としてバリバリ働いてるんだけど、旦那さんが失業したために、自分が家計を支えなくてはならないのを負担に思ってる。
そして、弟のクロードは、アルコール依存症で、離婚して、仕事もしないで酒びたり。

そんな3人…兄弟だけど仲は最悪。
おまけに、宗教にも巡礼にもまるで興味はないんだけど、遺産は欲しい。
だから、やむを得ず、サン・ティアゴ巡礼に一緒に出かけるわけで。

3人は、ギイという男性ガイドの主催するグループ・ツアーに参加するんだけど、そこに参加している他のメンバーもまた強烈。

このツアーを卒業試験合格祝い?に伯父さんにプレゼントされたとかいうイマドキの女の子、カミーユとエルザ
カミーユが好きだから一緒にいたい…とかいう理由で参加したアラブ系の少年サイード
そして、サイードに、メッカ巡礼に行くと思いこまされて参加したアラブ系の純粋な少年ラムジィ
さらに、病気で?髪が抜けたからか、スカーフで頭を隠した物静かな女性マチルド

そんなメンバーが、それぞれの個人的な事情とか、葛藤とかを抱えながら、お互い少しずつ交流を深めていく物語。
歩いていくにしたがって、ちょっとずつ進んでいくような。

そんな感じなので、すごくドラマチックな展開だとか、そういう物語ではないし、ありがちといえばありがちなストーリ^なんだけど、なんていうか…淡々としながらも退屈するような映画ではなくて、最後まで飽きずに観ました。

ラストも、なかなか爽やかでありながらユーモアもあって、出来すぎと言えばそうだけど、心温まるようなエッセンスも盛り込まれていたりして、良かったです。

映画の公式サイトを見たら、巡礼路への道のりが人生に例えてあって、なるほど…と思いました。

巡礼路って、コースはいくつかあるのですが、映画の場合は、フランスのル・ピュイ・アン・ヴレイからスタートしてスペイン西部のサン・ティアゴ・デ・コンポステーラまでひたすら歩いていきます。
それって、山あり谷ありで、やっぱりすごく大変な道のり。

メンバーの中の2人、ピエールとエルザは、すごく重い荷物をもってスタートするんだけど、途中でかなりたくさんの荷物を捨てて、本当に必要なものだけもって歩くことにするんですよね。
エルザは、シャンプーやクリーム類、それにドライヤーを。
ピエールは、日常生活のなかで手放せないと思いこんでいた薬まで。

でも、それらがなくても、実はなんとかなる。
なるほど、人生に本当に必要なものって、そう多くはない…って。

そんな感じで、巡礼路が人生そのもののように描かれているので、「巡礼」といっても、宗教色はほとんどありません。
サン・ティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼を描いているのに、敬虔なカトリック信者の内省的な祈りの旅路…なんて類のものではなく。

むしろ、「この人たち、なんで巡礼なんてしてるの?」(←それぞれキリスト教とはまったく関係のない理由から巡礼している)というメンバーなんですよね。
3人兄弟はお金目当てだし、ギイは生活費を稼ぐための仕事として、サイードは好きな女の子を追いかけるため…。
おまけに、唯一信仰心に篤いラムジィは、メッカへの巡礼だと思いこんでるという始末。

もう、なんてシュールな設定…!

そんなメンバーが、そろってひたすら歩き続けるんだけど、それでもだんだんとそれぞれが巡礼に意味を見出すようになるんです。
最初はものすごく巡礼を嫌がっていた3人兄弟も、遺産相続の条件を満たしたあとも、自分の意思で歩き続けることを決めて。
でも、それは宗教とはまったく関係のない意味なんだけど。

そして、自分自身をみつめなおすことで、みんな変化を遂げて、最後、サン・ティアゴ・デ・コンポステーラに到着したらやっぱり達成感もあって、旅を終えたあとはみんな何か得るものがあるんですよね。

日本のお遍路さんとかとも通じるところがあるんだと思うのですが、宗教的な行為であるはずの巡礼が、むしろ宗教とは離れた意味をもっているというか。

なので、キリスト教にまったく興味がなくても、サン・ティアゴ巡礼にまったく興味がなくても、楽しめる映画だだと思います。

…というか敬虔なカトリック信者の人が観たら、むしろ、何じゃこれは!…となるんじゃなかろうか…なんて思ったり。

どうやら、監督さんは、この映画に宗教批判や人種差別批判も込めてるようですね。

登場する聖職者が、アラブ系だからという理由で、サイードやラムジィ、ギイの宿泊を拒否したりする場面もあったりして。
出発したときは人種差別的発言をしていたはずのピエールが、仲間全員を泊めてくれないなら、みんなでホテルにとまるぞ!…と出ていく場面は、なかなか痛快でした。

全体的なストーリーは、旅を通して成長する…というありがちなものではありますが、この映画の魅力は、現代フランス(…にかぎらず、現代の先進国)が抱える事情を反映した、シュールで辛辣なセリフ。
そんなセリフの1つ1つがおもしろいので、目が離せません。
フランスのことを少しネタとして知っていると、二倍楽しめて、ニヤリとさせられる場面も。

そうそう!ネタバレになるけど、フランス・テレコムのエリート管理職だとかって、鼻もちならないウザい若い男性が登場するんですが、ラストで、実は彼は郵便局の窓口係?だった…って分かるのも、笑えました。
見栄をはらずに、自分に正直になればいいのにね。

ま、後半はそういう辛辣さが徐々に姿を消して、素直な展開になるので、そういう意味では前半がおもしろいのかもしれません。

でもまあ、落ち着くところに落ち着く…というラストも、観終わったあと、すっきりした気分になるので、私は好きです。

そんな感じなので、フランス映画にしては、ストーリーそのものは素直。

フランス映画らしいとっつきにくさがあるとすれば、巡礼メンバーが見る夢がときどき映像に登場する場面。
まるでダリかマグリットの絵のようで、説明もないので、意味が分かるような、分からないような。
それぞれいろいろあるのね…とは思うけど、アメリカ映画なら、きっと入れない場面でしょう。

とはいえ、それ以外は、いたって素直。
あ、もちろんセリフは辛辣でシュールですけどね。
これはストーリーの流れの話。

それから、この映画の魅力として、もう1つ忘れてはならないのは、世界遺産にもなっているサン・ティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路の美しい景色

出発地点のル・ピュイも趣あるし、モワサックの回廊や、フランス・バスクのサン・ジャン・ピエ・ド・ポールらしき町も登場します。
町の名前や観光地的な見どころはほとんど登場しないのですが、羊の群れが草を食んでるピレネーの緑の丘陵とか、美しい古城のある風景とか、雄大な自然の風景がとても美しいです。

フランス側では緑が美しいのに、スペイン側に入ったとたん、なんだか乾いた風景でしたが…(笑)
北部スペインはグリーン・スペインだけど、フランスに比べるとやっぱり乾いてるのかな?

それから、一行はサン・ティアゴ・デ・コンポステーラのパラドールに泊まるんだけど、そのパラドールがまたゴージャスで!
ちなみに、エンドクレジットには、ちゃんとパラドールのロゴが出てましたw

おまけのように登場するサン・ティアゴの大聖堂も美しかったですよ(笑)

***

そんなこんなで、大笑いする映画ではないけど、くすっと笑える。
泣ける映画ではないけど、心温まる場面もある。

シュールで辛辣なセリフが魅力の、ストーリーそのものはいたってシンプルな映画です。

興味がある方は、ぜひ一度ご覧あれ。
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