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映画『ルノワール―陽だまりの裸婦』を観ました。

2013/10/06
めずらしくフランス映画づいております(笑)

10月4日(金)から公開のフランス映画『ルノワール―陽だまりの裸婦』を観てきました。

ルノワールの最晩年に光をあてた伝記映画で、妻を亡くし、重度のリウマチや息子の出征に苦しむルノワールが、突然あらわれた若い娘デデの存在によって、インスピレーションを得、最後の力をふりしぼって絵画の制作にとりくむ姿を描いた作品です。

このあいだと同じ、アート系のマニアック映画館での上映でしたが、ルノワール…というと、印象派好きの日本人はとても多いので、きっと人気に違いない…と思って、早めに行ってチケットを買ったのですが、正解でした。

満席で、立ち見もいるほどの人気ぶり。
そして、休日にもかかわらず、かなり年配の方々の率が高かったです。

あ、ちなみに、私は、ルノワールは特別好きってことはないのですが、ルノワールが描く人物は、愛情があふれるような温かさと愛らしさがあって、ほわっとした気持ちになります。

…というわけで、まずは予告編をば↓



詳しい感想は、下に書くとして、まずはざっくりと印象を。

この作品…非常にフランス的な映画だと思いました。
このあいだ観た『大統領の料理人』と比べても、段違いにフランス的。

つまり、どういうことかと言うと、詩的で曖昧な雰囲気が全編に漂っていました。

アメリカ映画の場合と違って、とにかく、説明されない。
「あれってどういう意味だったの?」とか、「あれってなんだったの?」とかいう質問は、ナンセンスなんだと思います。

登場人物の背景も、何か複雑な事情があるようににおわせながらも、最後まで説明のないまま終わる。

…そんな映画でした。

ただ、非常に映像が美しく、特に、光のきらめきの扱いは、まるでルノワールの絵そのものを見ているかのようでした。
全編を通して、美しいイメージのコラージュのような映画だと思いました。

それでいて、ところどころに、考えさせられるようなセリフがちりばめてあって、心に響くものがありました。

…つまり、ハリウッド映画に慣らされた日本人には、好みの分かれる作品でもあると思います。

まあ、ただ映像美を楽しむというなら深く考えなくてもいいのですが、ルノワールの伝記映画としての「ストーリー」を期待すると、肩すかしをくらうかも。

フランス的な映画だということを覚悟のうえ、曖昧さや議論の余地が残る宙ぶらりんの感じを楽しみながら観ることをおすすめしたい作品です。

さて、以下、もうちょっと詳しい感想です。

この映画…このあいだの『大統領の料理人』もそうだったのですが、予想とちょっと違う中身でした。

配給会社のふれ込みが若干ずれてるような気がしないでもないんだが…どうなんだろう。。

宣伝では、ルノワールの作品「浴女たち」誕生に秘められた物語…っていうようなふれ込みになってたんですが、その宣伝文句から予想していたストーリーとは少々違いました。

ま、それは否定できない側面をあらわしてもいるので、ハズしてるわけじゃないんですが…。
実際、「浴女たち」の制作場面も出てくるし、そのインスピレーションの源になったモデルの物語…ということで、当たってはいるのですが。

このふれ込みだと、特にこの「浴女たち」という作品にスポットが当てられてて、その制作過程のドラマが描かれるのか…と勝手に想像してたんですが、そうではなかったです。

映画の中では、他にもいろんな作品が出てきていて、この「浴女たち」に特に注目してあったわけではなかったので。
「浴女たち」は、むしろ、数ある作品の中の1つというあつかいでした。

フランス版の公式サイトをちょこっと見たのですが、日本版と違って、特に「浴女たち」を強調してるようではなかったです。
絵画好きの人たちを映画館に呼びよせるための宣伝文句かもね。

***

それから、予想していたよりも、ルノワールの次男ジャンのあつかいが大きかったです。
彼は、のちに映画監督として有名になる人物です。

映画は、第一次大戦中を舞台にしているので、ジャンもフランス軍の兵士として戦い、そして脚を負傷して療養のため前線を退いて父の住む南仏カーニュへやってきます。
そこで、父のモデルを務めるデデと出会い、恋に落ちるのですが…。

ジャンは、まだ21歳で、自分がやりたいことや将来の夢もない若者。
それどころか、戦争のせいで、将来があるかどうかも分からないわけです。

そんなジャンに、映画監督になる…という夢を与えたのが、デデだった…というように描かれていました。

つまり、デデは、父ルノワールだけじゃなく、息子のジャンにも、インスピレーションと生きる力を与えた女性だった…ということです。
映画全体を思いかえしても、ジャンは、父ルノワールと同じくらい大きなあつかいでした。

この映画は、デデという女性が、ルノワール父子にインスピレーションと生きる力を与えた物語なんだと思います。

そういえば、映画の原題は、『Renoir』。

映画の中で、デデが「どっちのルノワール?」なんて聞く場面がありましたが、画家ルノワールも、ジャンも、どちらもルノワールなんですね。
映画は、どちらか片方ではなく、両方のルノワールを描いてるんじゃないでしょうか。

***

ところで、ルノワール父子にインスピレーションを与えるミューズとなった女性、デデ。

彼女については、驚くほど何も明らかにされていません。

映画の中で、ジャンが、デデの住んでいるところも知らない…と言う場面がありましたが、彼女の実態はまさしく謎。

彼女は、「アンドレ」と名乗るのですが、劇中で「カトリーヌ」と呼びかけられる場面があります。
実際、史実に出てくるデデは、「カトリーヌ」。
カトリーヌは、芸名なのか?アンドレは、本名なのか?

それから、彼女は、ルノワール夫人に言われて、ルノワールのモデルになるべくやってきた…としか説明されません。
職業は、女優だと言うのですが、どうやらそれは売れない女優…あるいは女優志望なんだろうな…ということがにおわされる程度。

それはいいとしても、他にも、彼女が何やら過去に傷を抱えているようなことが何度かほのめかされます。
たとえば、赤ちゃんに対する拒否反応、それから「死」に対する敏感な反応…。
それらは、彼女が過去に何か傷を負うような経験をしたことがあることを暗示しているようなのですが、結局、最後まで何も明かされませんでした。

そして、映画の最後では、字幕で、大戦後、彼女がジャンと結婚し、ジャンは約束どおり映画監督になったこと、彼女が女優としてジャンの映画に出演したこと、が語られます。
そして、デデは、その後ジャンと離婚し、女優として成功することもないまま、ジャンが映画監督として栄光に包まれて亡くなったのと同じ年、ひっそりと息を引きとった、と。

つまり、2人の世界的な芸術家の成功と、その成功を陰で支えた女性の人生が対比されているというか…。

何だかんだで、この字幕で終わるっていうのは、この映画のほんとうの主役が、ルノワール父子ではなく、デデだったってことなのかな…と思いました。

***

上にも書いたように、この映画は、美しいイメージのコラージュのような作品で、このシーンにはどんな意味があるのか…とあえて考えても意味がないんじゃないか…と思えるような場面がいくつもありました。

シーンごとの連関もあえて曖昧な部分が残されているような感じでした。

そのあたりは、各自考えてね…ってことなんでしょう。

なんでもはっきりさせたくなる(笑)私としては、「あれはなんだったんだ?」とか、「なぜあそこであの人が…」とかいろいろ疑問は浮かびました。

最後も、結局、ジャンが戦地に戻ることを決意して、お父さんと別れの抱擁を交わして…っていうあたり(すみません、正確にはどんな場面で終わったか、忘れてしまいました。でも、ジャンが戦地に戻る…ってところで終わったのは確かです)で終わったのですが、「ここで終わるか!?」と、ちょっと唐突にも思えました。

まあ、綺麗に終わってはいるのですが、この作品のテーマとか、デデのこととかを考えると、「あれっ?」という感じを受けました。

あとの部分は、しかも字幕でさらっと説明してるしね…。

あれっ?そういや、デデはどうなったんだっけ?
ジャンが復員するって聞いて、モデルの仕事にも来なくなって、探しに行ったジャンと会話してる場面…で終わったんだっけか?

あ、違うか、ジャンが戦地に戻る前のガーデン・パーティーに参加して、ジャンと仲良くしてたなぁ。

最後は、結局、みんな仲直りして(ルノワール父子とか)、それでジャンが戦地に戻る…っていう終わり方だったのかな。

うーん…ハリウッド映画だったら、こういう終わり方はしないだろうよ…と思いました。
ま、そこがフランス映画の魅力なんでしょう。

***

さて、キャストについて。

ルノワール役の俳優さんは…なんだか以前に見たルノワールの晩年の写真とよく似た雰囲気でした。
ハマり役。

デデ役の女優さんは、どこかで見たことがあると思ったら、『笑う男』に出ていたクリスタ・テレさんでした。
豊満な身体は、まさにルノワールが描く裸婦像の女性という感じで、ヌード・シーンが多いものの、嫌らしさはまったくありませんでした。

ちょっと奔放な雰囲気を漂わせつつも、あどけなさを感じさせるイノセントな雰囲気が、デデにぴったりでした。

それから、ジャン役の俳優さんは、いかにもフランス人ぽくて、繊細でナイーブなところがジャンにハマり役でした。
なかなか整った顔立ちなのだけど、身長がちょっと足りないのが残念。

***

フランス語の勉強も兼ねて観たのですが、このあいだの『大統領の料理人』と違って、ワカモノが多いからか、早口で分かりにくかったです…。
レベル高し。

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